木のある心地よい暮らし

床リフォームに無垢材を使う。手間をかける、のある生活

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合板や他の素材を知る

「合板」は人工的につくられた“呼吸していない”ものであり、施工が容易で、傷に強い・防音性が高い・ワックス不要…などさまざまなメリットを持った製品です。
ビニールや塩ビ、化学繊維のタイルやカーペットも同様の利点を持っているといえます。

タイルには大きく分けて「クッションフロア」と「フロアタイル」があります。
クッション性の有無はありますが、いずれもメンテナンスが容易でコスト面にも有利性が高い素材です。
また、カーペットを用いる方法もあります。タイルカーペットならばデザインも豊富で、気軽にお部屋の雰囲気を変えることができるでしょう。ダニやホコリといったかつてカーペットにつきまとっていた問題もずいぶんと改善されてきています。
ただ、タイルは素材に木や石の雰囲気をのせたあくまで木目調や大理石調、といった人工物。もちろんカーペットも同様です。
これらの「合板」「フロアタイル」「カーペット」は、キッチンなど水回りでの耐久性やペットによる床の傷みへの懸念、コスト面などを考慮すれば合理的な選択肢に入ってくるでしょう。
これらの人工物は付き合いやすいように加工されていますので、当面の人当たりの良さは一級品といえるでしょうか。ただ、長く付き合っていけば、少しばかりほころびが出てきてしまうかもしれません。

合板フローリング、まして他の素材で得られにくいのは「木と暮らす」という感覚です。
傷や音への耐性と引き換えに、本来木の持っている温かみや肌触りは失われてしまいます。
合板のもつ感触としての冷たさは、そのまま人工的な冷たさです。
また、合板は木を接着剤で貼り合わせていますので、表面が割れたりして、その寿命は無垢フローリングよりも短くなります。

生きている無垢材には、そのなかに無数の小さな空洞(細胞)が存在しています。その気泡による空気層が天然の断熱材となり、熱伝導率を低くしてくれるので冬の寒さや夏の暑さを和らげてくれます。これは合板や人工物からは得られないもの。熱伝導率を低くする、という観点からみればフローリングの上にラグやマットを敷くという方法もありますが、無垢材フローリングには自然にその機能がそなわっています。
冬の朝、無垢フローリングに素足で触れると、「あったかい!」と感じてしまうほど。もちろん、無垢材自体に発熱作用はありませんので、その手触り、足触り、天然素材の心地よい感触が、私たちの想像を上回る感覚をもたらしてくれるから、そう感じてしまうわけです。
無垢材と過ごすことは、自然との暮らしを実感するということ。それは、日本の四季を楽しむ生活を味わうことにもつながるのかもしれませんね。

無垢材を知る

森林浴

「無垢材」は天然木から切り出された“生きている”木です。呼吸をして伸縮をするため施工には技術を要し、種類によっては傷付きやすく(この点は合板も同じ。傷に強い無垢材もあります)・水に弱い、天然木ゆえに均一感が出しにくい、という短所があります。ちょっとクセはあるけど、味がある。
“生きている”からこそ備わっている足触り・肌触りの良さ、室内の湿度をコントロールしてくれる機能、森林浴がもたらすものと同様の殺菌・消臭・リラックス効果など、上手く付き合っていけば長い間信頼を傾けることのできるパートナーとなり得るでしょう。
ちょっとクセがあってちょっと手間のかかる人が、長く付き合ううちにどんどんと打ち解けていって心を預けられる親友になる。あなたの生活に寄り添っていく無垢材はそんな素材です。

無垢材と共に過ごすということ

お部屋のリフォームを考えたとき、あなたは
「この部屋で過ごすこれからの時間」
を思い描かれるのではないでしょうか。
子供の成長や、自身のこれからの生活の多くの時間を「木と暮らす」ことに決めるのならば、ともに成長していく暮らしのパートナーとして「無垢材」のことを知ってあげてください。

先にあげた無垢材の持つ短所はそのまま長所にもなります。
傷つきやすいからこそ、優しく付き合いしっかり気を配りメンテナンスする。
人工物ではないから、同じ表情が一つとしてない無垢材。木のもつさまざまなひとつひとつの表情はあなたの生活に豊かな味わいをもたらしてくれるでしょう。

表情豊かな一木彫(り)(いちぼくづくり)の仏像を造り続けた江戸時代の名仏師・円空は、自然の中ではぐくまれた木に宿った仏の姿を、創り上げるというよりは、すでに木のなかに眠っていた仏の姿を自らの手で見つけだすように彫り上げました。自然がくれた恩恵をわかりやすく形にしていったのです。それは彫り師の巧みな技と悠久の大地に育った木との共同作業でした。
生涯10万体の木彫り像を残したといわれる円空。その仏像は北海道から京都、奈良にいたる旅のなかで生み出され、多くの人の暮らしのすぐそばに寄り添い、安らぎをあたえたといいます。
木と暮らす、無垢材という素材と上手に付き合う生活であなたが得られるものに想いを巡らせてみてください。
無垢材という、ちょっと手間のかかるけれど素敵な個性を、どうぞみなさんの暮らしの豊かさに上手に還元してみませんか。