木のある心地よい暮らし

木育(もくいく)が子どもの心と体に育むもの

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木のおもちゃとプラスチックのおもちゃの違い

積み木で遊ぶ子ども

木のおもちゃには、プラスチックのおもちゃにはない良さがあります。いくつか下記に挙げてみましょう。

  • ふれたときの自然なぬくもり
  • 目へのやさしさ
  • シンプルなので遊びの自由度が高い
  • 刺激が強すぎないので飽きにくい
  • 経年劣化しないので、長く遊べ、次の世代にも引き継げる

木のおもちゃにぬくもりを感じるのは、木が多孔質(細かい穴の空いた構造)だから。ミクロの穴が空気をかかえこみ、湿気を吸い込むために、触ってもペタペタとへばりついたりひんやりしたりせず、自然なぬくもりを感じられます。
また、子供向けの木製おもちゃは、カラー塗装されていないものはもちろん、されているものでも比較的発色が柔らかく、目にやさしいのも特徴です。木材の表面には、プラスチックなどの化学的な材質にはない細かな凹凸があり、それによって光が拡散されるため、こうした違いが生まれます。

また、木を使ったおもちゃは、あまり複雑な構造にすることはできません。どうしても、積み木やパズルなどのシンプルな形のおもちゃが多くなります。でもこれが逆に、子どものイメージの世界を広げる効果があります。

ボタンを押すと数パターンの音や光が出て子どもの気をひくようなおもちゃだと、子どもはあっという間に飽きてしまい、何回か遊ぶともう見向きもしなくなります。ところがシンプルな木製おもちゃは、年齢を重ねてもときどき引っ張り出してきて遊びます。
シンプルだからこそ、そのときそのときの成長具合に合わせ、自分なりに工夫して遊ぶことができるのです。

そして残念ながら、プラスチックなどの化学的な材質でできたおもちゃは、古くなると風化したり色褪せしたりすることも特徴です。古びて壊れたおもちゃは、人に譲ることもできず捨てるしかありません。
その点、木のおもちゃは長持ちします。ちゃんと保管しておけば何年後でも、また子どもたちを喜ばせることができるのです。

木育で子どもはどう変わる?

いくらテストの成績が良くても、周囲とコミュニケーションがとれない、キレやすい、では悲しいですね。
人が悲しんでいたら「大丈夫?悲しいね」と共感できる。壁にぶつかったときに「できない」ではなく「どうしたらうまくいくかな?」と発想できる。そんなしなやかな心を育んで欲しいと、どんな親も願っています。

トラブルが起こったときに自ら判断して行動できる主体性や、相手の気持ちに寄り添う共感性は、これから子どもたちが成長して社会で活躍するうえでも、欠かすことのできない能力です。

しかし手を伸ばせば簡単に欲しいものが手に入るような環境では、逆にこうした能力を鍛える機会は奪われているかもしれません。木育によって育まれる想像力、協調性、問題解決能力などは、子どもたちが未来を生きる武器になります。

木は何も語りませんが、幼い頃から自然に親しみ、木や森を身近に感じながら育つことで、子どもは勝手に木から学びます。遊びや生活のなかで蓄積された経験や知識が、成長とともに有機的につながって、子どもの内面に豊かな世界を形成していきます。それこそが、ほかの教育方法ではカバーできない、木育の特性ではないかと思います。

いますぐできる木育

「なんでも自分の思い通りになる」と思って育つと、思い通りにならないことが起こったとき、ポキっと折れてしまいがちです。幼い頃から自然に親しむことで、人智の及ばない自然への畏敬の念や愛着が育まれ、子どもの人格形成にも影響を与えていきます。

木育を始めるのに、特別な道具は必要ありません。子どもと一緒に近所の公園で木と触れあっても良いですし、家のなかにある木製の道具やおもちゃを使うことだって木育です。
気負わず大人も楽しみながら、子供のなかに自然を愛する心を育てていきたいですね。

参考論文:
「子どものすこやかな発達と子育て支援への「木育」効果の活用可能性」