木のある心地よい暮らし

木育(もくいく)が子どもの心と体に育むもの

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木で工作する子ども

みなさんは、「木育(もくいく)」という言葉をご存じでしょうか?
木育は、2004年に北海道で生まれた言葉。子供の頃から木や森に親しむことで、豊かな心を育てるという取り組みです。

何十年、何百年もその場所で生きてきた木。伐採された後も、家の一部として、家具として、おもちゃとして、第二のいのちを生きてゆく木。木は寡黙だからこそ、子供たちはそこから自由に、自分なりに学びます。

木育がなぜ子どもの教育に役立つのか、具体的にどんなことをするのかなど、親御さんが持たれる疑問にお答えしていきたいと思います。

木育は「木から学ぶ」体験

自然を眺める親子

木育というと、木のおもちゃで遊んだり、自然をテーマにした絵本の読み聞かせや野外活動、木工教室などが代表的です。でもそれだけではなく、そこからつながって広がる体験であることが、木育の条件です。

たとえば、「木のスプーンを作る」というワークショップを例に挙げてみましょう。
与えられた材料を、インストラクターの指示通りにヤスリで削りオイルを塗って完成、では、広がりがありません。
材料を触ってみて、ザラザラ、軽い、いい匂いがする・・・などなど、子どもが五感を使ってたっぷり木を感じられるようにしてあげましょう。サクラの木、杉の木、栗の木・・・それぞれに違いがあることに気づくでしょう。
「どうしてこんな違いがあるの?」と疑問が湧いてきたらしめたもの。子どもの興味に合わせて、大人が知識のサポートをしてあげましょう。

自然のなかに出てみて、「さっきの材料はこの木の仲間だよ」と教えてあげれば、子どもの頭のなかで、「木のスプーン」と「生きている木」がつながります。
手のひらで実際に木の幹に触れ枝葉を見上げた体験と、家に帰ってスプーンを使うたびに手や唇に感じる感覚情報がしっかり結びつき、頭のなかで整理されます。すべての材木は切られる前、森で生きていたことが、理屈ではなく体験として理解できます。

もちろん木のおもちゃ遊びや絵本の読み聞かせ、木工教室などもすばらしい体験です。ただ、それらが受動的でブツ切れの経験になってしまうと、「木のおもちゃで遊んで楽しかった」で終わってしまいます。
楽しかった思いがさまざまな分野とつながり、生きた知識が広がるように、日々の生活のなかで自然と触れ合う機会を増やすなど心がけてみましょう。ちょっとした周囲のサポートで、木育の効果が高まります。

生きている木に触れることの効果

五感が刺激され脳が育つ

森など、木が生きている場所には、樹木や草花、きのこやコケ、動物や昆虫など、多様な生物がいます。図鑑で見るだけでなく、実際に五感をフル活用しながらそれらに触れることで、子どもの世界は格段に広がっていきます。

そして、自然のなかで遊ぶことは、子どもの脳にとても良い刺激を与えます。
たとえばテーマパークに行ったり、ゲーム機で遊ぶ場合は、こちらは何もしなくても、相手があの手この手で楽しませてくれますね。ところが自然のなかでは、じっとしていても何も始まりません。そのかわりすべてが自由です。

走ってもいいし、歩いてもいい。寝転んでもいいし、登ってもいい。子どもたちは倒木を宇宙船に見立て、宇宙旅行を始めるかもしれませんし、木のウロを宝の隠し場所にして、宝集めを始めるかもしれません。
こうした遊びには、想像力や友だちと協力して遊ぶ能力、計画性や集中力が必要です。また、自然のなかでは予期しない問題が起こることも多いので、問題解決能力も自然に鍛えられていきます。

情緒が安定する

木のベンチに座っておしゃべりする男の子と女の子

「森林浴」という言葉は有名ですね。自分で動くことができない樹木は、身を守るためにフィトンチッドという物質を出しています。このフィトンチッドには、私たちのストレスを和らげ、心を安定させる効果があることがわかっています。
ドイツでわりとポピュラーな存在である「森の幼稚園」は、毎日の大半を森のなかで過ごすのが特徴です。ここに通う子どもたちは、通常の幼稚園児に比べて情緒が安定しており、体が丈夫なのだそうです。

園や学校での集団生活のなかで、子どもだってストレスを感じることはあります。そんなときは緑豊かな自然のなかで思い切り遊び、心と体を解放すれば、ストレスもどこかへ飛んでいきます。
リラックスすることで免疫力も上がり、風邪などを引きにくくする効果も期待できます。

アレルギーになりにくくなる

子どもを悩ませる病気のなかでもとくに厄介なのが、喘息やアトピーなどのアレルギー疾患。アレルギーを持つ子どもは、今どんどん増えています。
アレルギーを防ぐには、幼い頃から清潔にしすぎず、多くの菌に触れておくことが役立ちます。森の土にはさまざまな菌が棲んでいますから、遊びながらそれらを体内に取り込むことで、正常な免疫力を育むことができます。

木のおもちゃとプラスチックのおもちゃの違い