木のある心地よい暮らし

木のある暮らし。五感すべてで心地よさを受けとめる

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木造の家や無垢フローリング、一枚板のテーブルなどに憧れる気持ちは、見た目の素敵さからだけでないようです。
「木は心地いいもの」という確かな思いが、私たちの心や体のなかにあって、目にしただけで心地よさが想像できるからこそ、使いたいという気持ちが強くなるのでしょう。

木の心地よさは、人の五感に訴えかけるものがあります。
木が人の心や体に与えるいい影響については、科学的に少しずつ証明されてきました。それもご紹介しながら、木のある暮らしの魅力についてお話しします。

ぬくもりと柔らかさ:木と触覚

肌触りのよさは、天然の素材が持つ一番の魅力です。ポリエステルよりも木綿や絹が心地よいように、木にも独特のぬくもりや柔らかさがあります。

ふだんの生活で、身近に使っている木のものは「お箸」ではないでしょうか。
プラスチックに比べるとヒヤッとした感じがなく、手にもくちびるにも柔らかさが伝わってきます。

木にはストローのような管がたくさんあり、そこに含まれた空気が断熱材のように働いて、ぬくもりを感じさせてくれます。
また、この管は口に当たるときの衝撃を吸収するクッションにもなり、柔らかさを感じさせるのです。

木に触れたときにストレスを感じる度合いが低いことを確かめた実験※があります。

これから何を触るかわからないように目隠しをした人に、木材とアルミニウムの手すりを90秒間、軽く握ってもらい、その前後で血圧を測定。すると、木材の方がアルミニウムに比べて血圧が上がる度合いが少なかったのです。
触ったときに心地いいと感じられるものは、体への刺激も柔らかいのかもしれません。

五感のなかで、生まれて一番最初に備わる機能が触覚です。身体で感じた記憶は、のちのちまで長く残るといわれていますから、木に触れている時間が長いほど、これからの人生にもいい影響がありそうですね。

刺激をマイルドに:木と視覚

たとえば、日常のなかで空を見上げたり、木々を見たり。自然を目にすると、それだけでも気持ちがすっきりします。

心地よさの理由のひとつは、木が紫外線の一部を吸収して、目に入る刺激を少なくしてくれていることです。

もうひとつの理由は、まぶしさをやわらげているためです。金属やプラスチックに比べると、木に反射した光は柔らかく感じるでしょう。それは、木の表面の小さな凹凸に当たった光が、いろいろな方向に分散するからなのです。

また、木材は見た目に「ほっこりとした」温かみを感じさせます。それは、木肌の色が黄色~赤色のグラデーションの暖色系が基調になっているから。

木目を見るだけでも、人はやすらぎを感じているといわれています。等間隔に並んだものは冷たい感じを与えますが、木目の間隔は自然にできたものですから、不規則です。
そこに「1/fゆらぎ」と呼ばれる「自然から生まれたリズム」を、私たちは知らず知らずのうち感じ取っているのです。

日々の暮らしのなかで木を目にするだけでも、多くの心地よさを受け取っているのですね。

記憶もストレス対策も:木と嗅覚

ヒノキのお風呂のいい匂いを大きく吸い込んだとき、ふと、木造の家を建てているときの匂いを思い出すことがあります。

匂いと記憶とのつながりは深いのです。
人は、懐かしい匂いを感じたとき、幼い頃の思い出をくっきりと思い出し、そのときの気持ちまでがよみがえるといいます。

匂いからよみがえってくる記憶が強く鮮明なのは、嗅覚と記憶とが脳の中でダイレクトに結びついているため。匂いの記憶は、ほかの感覚よりも早く、脳に深く刻まれます。

また木の匂いには、ストレスに強くなる効果があるのをご存知でしたか。
木の香りがある室内とない室内で、それぞれ単調な計算作業をして、作業前、作業直後、その後の休息中の唾液を調べる実験※をしたところ、木の香りがある部屋で作業した方が、抗ストレスホルモンが多くなっていました。

家のなかに木があれば、毎日そこにいるだけでストレスに強くなれるかもしれない。これは、ちょっと嬉しいことです。

心地よい音にする:木と聴覚