フィトンチッドに期待される免疫力アップの効果とは？

フィトンチッドには、消臭効果や除菌・抗菌効果、抗酸化効果など、さまざまな効果があると言われています。またそれは、私たち人間の体にも良い作用を与えます。
では、フィトンチッドは人の体のなかでどのような働きをするのでしょうか。

さまざまな研究により、次のように作用すると考えられています。

1. フィトンチッドの香りがリラックス効果を生む。
2. リラックスすることで、自律神経のバランスが整い、ストレスホルモンの分泌が抑えられる。
3. ストレスホルモンの減少によってナチュラルキラー細胞が活性化し、免疫力が高まる。

ナチュラルキラー細胞は、免疫細胞のひとつ。体内の病原菌やウイルスを発見して退治する役割があり、がん細胞も殺傷する能力があることが分かってきました。この細胞が元気な状態だと、免疫力がしっかり働くのです。
そして、ストレスホルモンが減少すると、ナチュラルキラー細胞が活性化することがわかっています。つまり、リラックス効果のあるフィトンチッドを体内に取り込むことで、免疫力が高まると期待されているのです。

森の匂いを吸い込み、森の中で聞こえる小鳥のさえずりや小川のせせらぎなどを耳にすると、心地よい気持ちになります。それはたんに感覚的なことではありません。これまで、さまざまな研究機関が森林浴の効果を調査した結果、人間への癒しの効果や病気の予防効果が科学的に証明されているのです。

具体的には、次のような効果があることが分かっています。

「中高年サラリーマンのケース」

国立研究開発法人森林総合研究所では、東京で働く男性サラリーマン12名に2泊3日の森林浴をしてもらい、ナチュラルキラー細胞活性を測定。すると、次のような結果になりました。

森林浴1日目：43%アップ
森林浴2日目：56%アップ

さらに、森林浴から東京に帰った後に測定すると、次の様な結果に。
森林浴から1週間後：45%高いままを持続
森林浴から1ヶ月後：23%高いままを持続

このような調査から、森林浴によって免疫力が5割ほど高くなり、しかもその効果は1ヶ月ほど持続することが分かったのです。

「女性看護師のケース」

また、東京都内の病院に勤める女性看護師13名に、2日間、森林をゆっくり散策してもらい、東京にいるときとのナチュラルキラー細胞活性を比較すると、次のような結果が得られました。

2日間の森林浴後：38%アップ
森林浴から1週間後：33%高いままを持続
森林浴から1ヶ月後：10%高いままを持続

男性の実験結果より数値は下がるものの、都心の病院での勤務という高ストレス状態にある女性にも、同様の効果が認められました。森林浴は、性別や年齢を問わず健康効果があるということですね。

一方で、同じく東京で働く男性に都市部の観光旅行に行ってもらい、文化財の見学などをしてもらったところ、森林浴後のような活性は見られなかったそうです。つまり、免疫力の向上に有効なのは休暇や旅行よりも、森林環境で過ごす時間であることがわかります。

参考資料：森林総合研究所 第２期中期計画成果集

先にご紹介した研究会による女性看護師への森林浴実験で、ストレスホルモンであるアドレナリン濃度を測定すると、次のような結果になりました。
森林浴1日目：57%低下
森林浴2日目：68%低下

ストレスホルモンが3分の1にまで減少しています。
この実験で、高ストレス状態にある人に、森林浴が高いリラックス効果を与えたことが分かります。

また、林野庁のホームページにも同様の結果が示されています。
森林に座って景色を眺めた場合、代表的なストレスホルモンである唾液中のコルチゾール濃度が、都市を眺めた場合に比べて13%減少したというのです。つまり、運動などをしなくても、森林内にいるだけでストレス減少効果があるということです。

参考サイト：林野庁 森林の有する多面的機能について 保険・レクリエーション機能