木を読み生かす、熟練の大工の技術
素人からは、現場で適当に木材を組み合わせているように見える大工さんのしごと。
いえいえ、木へのこだわりが高い人であればあるほど、木材の特性、キャラクターを生かす仕事をしています。そうでなければ、建物が長くもつわけはありません。
建立から1300年を経る法隆寺を筆頭に、日本の寺社は世界でも類を見ないほど長持ちしています。地震や雨が多く、気候の変化が激しい日本において、なぜ木造建築がここまで長寿なのかと、不思議に思いませんか?
その理由には、木材自身のすぐれた性質はもちろんですが、木のクセを活かして丈夫に組み立てる大工たちの知恵があるのです。
大工さんが受け継いできた、木を読む技術、木を生かす技術は、建築に欠かせない財産。家を建てる前、リフォームする前に少し勉強しておくと、後悔のない家づくりに役立ちます。
木を読む技術
木は土と水、太陽が育む自然の産物。工場でつくられる規格品とは違い、一本いっぽんに個性があります。
そうした個性は、樹種や産地による違いはもとより、生えていたときの環境=その木の「生い立ち」によっても変化します。
たとえば谷底に生えていた木は、いつも同じ方向に強く吹く風にさらされて育ちます。そうした逆境に耐えて育つうちに、木の内部にねじれが生じます。
ねじれというと悪いように聞こえますが、ねじれがあるからこそ出てくる粘り強さがあります。逆にいうと周囲との競争や風の影響もなく、すくすくと育った木は強度の面では一歩遅れをとるものです。
また、木は日当たりの良い側に膨らんで育つため、製材した後もその方向に反りや曲がりが出やすくなります。それを教えてくれるのが、年輪や節の出方。
たとえば日当たりの良い側では年輪が太くなり、枝も出やすいため節が多くなります。逆に日当たりの悪い山側では、年輪が細くなり節も少なくなるため、木材を見ればその木がどちら向きに生えていたのかがわかります。
伐採して四角い材にしてしまうと、素人目にはどの木もみな同じように見えます。しかしどんな木も、森で生きていた頃は真っ直ぐだったり曲がっていたりと、それぞれに違いがありました。製材してもそのクセは消えず、むしろ時間とともに増大して出てくることも多いのです。
日々、木と向き合いながら家を建てている大工さんであれば、木目や節の出方を見て、こうした木のクセを見抜くことができるものです。
木を生かす技術
反ったり曲がったり、ねじれたりと、何かと厄介ごとの多そうな木。でも日本には古くから、そうした木のクセを生かして逆に丈夫な家を作る技術が培われてきました。
まず大工さんは木を見て、その木がどのような動きをするかを予測します。たとえば、反ることがわかっている木なら、上方向に反った状態で梁に使い、重力で垂れてこないように使いますし、右曲がりのクセのある木は、左曲がりのクセを持つ木と組み合わせて使います。このように互いの力が反対方向に働くように使えば、時間がたっても隙間ができたり、強度が落ちることがありません。
木がもともと持っている曲がろうとする力を逆に利用して、家の各パーツがきちんと収まり、時間とともにむしろ強度が増すように組み立てる。それが熟練した大工さんの腕の見せ所です。
さらに大工さんは、「この樹種は白アリや湿気に強いから土台に向く」「この樹種は硬くてすり減らないから玄関に」など、樹種による特性についても多くの知見を持っています。これらも先輩から受け継いだり、自身が施工を手がけるなかで蓄積してきた、木を生かす技術のひとつです。
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