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木造住宅は何年もつ?長く住み続けるには素材選びが大切

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木造住宅は何年もつ?長く住み続けるには素材選びが大切

日本の住宅における「木造」の割合はどれくらいか知っていますか?ヨーロッパに多い石やレンガ造りの住宅は日本では珍しく、一般住宅の多くは木でつくられています。国土交通省が行った「平成30年度住宅経済関連データ」によると、平成30年の新設着工戸数における木造住宅率は56.9%と高い水準にあり、とくに平成20年以降は上昇傾向にあります

人気が高い木造住宅の建築技術は年々進化しているはずですが、残念ながら寿命は短くなっているのが現状です。日本には法隆寺や正倉院など、1,000年以上の歴史を持つ木造建造物も存在するのに、近年の木造住宅は、なぜ短命化しているのでしょうか。今回は木造建造物の素晴らしさを見直しながら、長もちする木造住宅のあり方を考えていきたいと思います。

歴史的建築物から学ぶ木造住宅の魅力

日本のみならず、世界でも最古の木造建築物として知られる法隆寺五重塔。607年に聖徳太子が創建し、1,300年以上の歴史を持つ法隆寺は日本で初めてユネスコの世界遺産に登録された、大変貴重な仏教施設です。
創建当時は現在のような高い建築技術や資材もなかったはずですが、なぜ1,300年以上たった今でも、その姿を維持できているのでしょうか。その理由は主に3つあると考えられます。

ひとつは柱に檜を使っていること。木材のなかでも檜はとくに耐久性や保存性にすぐれた樹種であり、伐採から1,000年経っても当時と変わらない強度を保つといわれています。法隆寺五重塔が強風や地震に負けなかったのは、檜の柱のおかげといっても過言ではありません。

ふたつめの理由は解体修理を想定した設計にあります。法隆寺の柱や梁は金物を使わずに資材を組み合わせる継手(つぎて)・仕口(しぐち)という工法が用いられており、当時の技術や部材を生かした修理・交換が可能なのです。1,300年の歴史のなかで法隆寺も他の建造物同様に定期点検・修繕をくり返していますが、修繕工事をしやすい設計になっているため、傷んだ箇所はすぐに資材の交換や修繕が可能で、その姿を保てています。

最後に着目したいのが、法隆寺の耐震構造です。法隆寺では建物を支える木組みをあえて固定しない「積み上げ構造」を採用していて、多少の揺れは建物が吸収してくれる仕組みになっています。世界有数の地震大国・日本にあっても倒壊しなかったのは、この構造のおかげと言えるでしょう。
このようなさまざまな条件が重なったことによって、法隆寺のいまがあるのです。

日本の木造住宅が短命化しているのはなぜ?

法隆寺までとはいかずとも、一般的な日本の木造住宅も、かつては寿命が長いと言われてきました。最近の古民家ブームで築100年以上の木造住宅が注目されていることからも、いかに木造住宅が頑丈なのかがわかります。しかしながら、ここ数十年で木造住宅は短命化しており、築30年程度で建て替える人も少なくありません。
税法では木造住宅の耐用年数は22年と決められていて、それを過ぎると資産価値はゼロになります。1998年の法改正以前の耐用年数は24年であったことからも、木造住宅が短命化しているのは明白。アメリカの木造住宅の平均寿命が100年前後であることを考えると、いかに日本の木造住宅が短命なのかがわかりますね。なぜこんなに短命なのでしょうか。その理由を見ていきましょう。

ひとつの家に長く住み続ける意識が希薄

そもそも日本では外国のように、同じ家にずっと住み続けるという考えが希薄です。親から住宅を譲り受けた人も古い家は解体し、家族形態やトレンドに合った住宅を建てる傾向にあります。そのため長もちする家づくりという考えが欧米ほど浸透していないのです。

高温多湿な気候は木造住宅の大敵

高温多湿な日本の気候が木造住宅の劣化を速めている問題もあります。湿度が高いとどうしても住宅がカビやすく、資材の劣化も進みます。さらにジメジメした環境下ではシロアリもわきやすく、柱や梁が食われてしまうことも。日本の木造住宅で長期間暮らすためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。

化学建材が木造住宅の寿命を縮める

日本の木造住宅が短命化した最大の理由として、安くて工期の短い住宅が大量につくられるようになった点が挙げられます。
かつて日本の木造住宅は地域に根付いた職人が素材を厳選して、丁寧につくっていましたが、高度経済成長期以降は大手住宅メーカーが台頭し、化学建材を多用した家がメジャーとなりました。化学建材に使用される化学合成接着剤の寿命はせいぜい20~30年で、劣化すると強度が弱まり、建物にガタが出てくるようになります。この化学合成接着剤は人体にも悪影響を及ぼすため、極力使用をさけたいものでもあります。

長く暮らせる木造住宅づくりには素材選びが大切